ケアマネの法定研修が見直しへ!見直しの背景とカリキュラムについて解説

目まぐるしく変化する社会環境のなか、ケアマネジャー(介護支援専門員)に求められる役割も変化しています。厚生労働省では、2024年度からのケアマネジャーの法定研修の見直しを行いました。しかし、法定研修の内容が変わることに戸惑う人もいるのではないでしょうか。この記事では、今回見直されたケアマネジャー法定研修のカリキュラムについて、見直しの背景とともに解説します。

厚生労働省がケアマネジャー法定研修のカリキュラム見直しを通知

厚生労働省は2022年、ケアマネジャーの法定研修のカリキュラムとガイドラインについて、見直し案を通知しました。2023年2月に告示され、カリキュラムの見直しが実施されることとなりました。見直し内容は、2024年4月以降の研修に反映されます。

今回の見直しにおける大きなポイントは、「適切なケアマネジメントの手法」をすべての研修に位置付けた点です。厚生労働省は、2020年から「適切なケアマネジメントの手法」の周知を始めており、2022年度には実践研修を開催するなど、その普及に力を入れてきました。今回のカリキュラム見直しに伴い、2024年4月以降は全研修に「適切なケアマネジメントの手法」が位置付けられることになったのです。

ケアマネ法定研修に見直しが必要になった背景とは?

ケアマネジャーの法定研修に見直しが必要になった背景には、社会環境の変化があると考えられます。介護や医療、福祉の実践方法や技術は日々進歩しており、介護保険制度をはじめとする社会保障制度を取り巻く環境は常に変化しています。社会環境が変化するにつれ、ケアマネジャーが習得すべき技術や知識、ケアマネジャーに期待される役割も刻々と変化しているのです。

また、利用者像にも変化が表れています。ケアマネジャーが実際に対応する相手には、独居で介護を必要とする人や認知症や精神疾患を有する人、医療措置を必要とする人だけでなく、支援を必要とする家族も含まれるようになりました。実際の利用者像が多様化、複雑化してきたことも、ケアマネジャーの法定研修に見直しが必要となった背景のひとつといえるでしょう。

このような状況に加え、介護保険制度や介護報酬の改定があることから、ケアマネジャーの法定研修の内容やあり方についても定期的に見直す必要があると認められ、法定研修の見直しの運びとなりました。

ケアマネ法定研修のカリキュラム見直し3つのポイント

今回実施されるケアマネジャー法定研修のカリキュラム見直しには、3つのポイントがあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 「適切なケアマネジメントの手法」に関する内容が追加

「適切なケアマネジメントの手法」を学ぶ内容が、各科目類型に追加されました。すべての法定研修に「適切なケアマネジメントの手法」を取り入れることによって、実務研修から更新研修まで継続して学べる仕組みが構築されています。研修を受けることにより、生活の将来予測や各職種の視点・知見に基づいた根拠のある支援を組み立てることが期待されています。

実務研修では、新たに心疾患と誤えん性肺炎の予防、他法他制度の活用が必要な事例に関するケアマネジメントの項目が追加されました。専門研修では、これまで行っていたケアマネジメントの演習項目の時間数はそのままに、内容を適切なケアマネジメントの手法に添うものに変更しています。具体的な変更内容は以下のとおりです。

変更前の演習項目
  • リハビリテーション及び福祉用具の活用に関する事例
  • 看取り等における看護サービスの活用に関する事例
  • 認知症に関する事例
  • 入退院時等における医療との連携に関する事例
  • 家族への支援の視点が必要な事例
  • 社会資源の活用に向けた関係機関との連携に関する事例
  • 状態に応じた多様なサービスの活用に関する事例

  • 変更前の演習項目
  • 生活の継続及び家族等を支える基本的なケアマネジメント
  • 脳血管疾患のある方のケアマネジメント
  • 認知症のある方及び家族等を支えるケアマネジメント
  • 大腿骨頸部骨折のある方のケアマネジメント
  • 心疾患のある方のケアマネジメント
  • 誤えん性肺炎の予防のケアマネジメント(新設)
  • 地域共生社会の実現に向け他法他制度の活用が必要な事例のケアマネジメント(新設)
  • また、主任ケアマネジャー研修においては、「終末期ケア(EOL(エンドオブライフ)ケア)を含めた生活の継続を支える基本的なケアマネジメント及び疾患別ケアマネジメントの理解」が新設されました。これまでのターミナルケアはこの項目に統合されており、終末期ケアにおけるケアマネジメントをより深く学べるでしょう。

     近年の動向に関する内容を定期的に反映

    高齢者を取り囲む環境は目まぐるしく変化していることから、近年の動向に関する内容を定期的に反映することとなりました。具体的には、地域共生社会やヤングケアラー、仕事と介護の両立、科学的介護(LIFE)、身寄りのない人への対応などの内容を研修に取り入れています。この見直しによって、より時代に即したケアマネジメントを行えるようになるでしょう。

    また、今後は認知症や終末期などで意思決定支援を必要とする利用者や世帯が増えると予想されています。意思決定支援の場面では、職業倫理の重要性がよりいっそう高まることから、職業倫理の視点についても強化することとなりました。すべての研修において、倫理にかかわる項目は時間数増加もしくは新設となり、職業倫理について必ず学べる仕組みがとられています。

     法定研修修了後の継続研修を見据えたカリキュラムの見直し

    ケアマネジャーが利用者に適切な支援を実施していくためには、継続的に学ぶ必要があります。しかし、研修の時間は限られているのが現状です。実際に、今回のカリキュラム見直しでは、実務研修と専門研修Iにおいて、以下の項目が時間数減少となりました。

    • 実務研修における「居宅サービス等計画の作成」「サービス担当者会議の意義及び進め方」「モニタリング及び評価」
    • 専門研修Ⅰにおける「ケアマネジメントにおける実践の振り返り及び課題の設定」

    このように限られた時間数のなかで、ケアマネジャーは必要な知識を習得しなければいけません。そのため今回の見直しでは、法定研修の修了後も必要な知識の習得のために継続的に学べるよう、法定外研修やOJTなどへつながることを意識した知識の獲得に重きを置いた内容となりました。

    特に実務研修の課程では、実践で活躍するための継続研修を見据えたカリキュラムが必要となります。そのため、継続研修で実践力要請の基盤となる幅広い知識を獲得できるよう、実務研修における習得目標を「必要な知識を有しており、具体的な用語や実例等を述べることができるレベル」「必要な理念や考え方について理解しており、その理念や考え方について自分の言葉で具体的に説明できるレベル」と設定することになりました。

    また、専門研修IIと主任ケアマネジャー更新研修では、ケアマネジメントの実践の振り返りと行うと同時に、最新の知見を確認し実践のあり方を見直すための項目が新設されています。

    ケアマネジャー研修の変更点から介護ニーズの変化を理解しよう

    ケアマネジャー研修の新たなカリキュラムは、2024年4月以降に実施される研修から反映されます。研修の変更点から、ケアマネジャーには個々のニーズに対応し、根拠に基づいた適切な支援が求められていることが理解できるでしょう。介護の現場では、このような時代の要請を十分認識し、ケアマネジメントの質を高める努力を怠らないことが重要です。

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