アセスメントシートで業務を効率化。 7つの様式とカスタマイズのポイントを解説

介護のアセスメントシートには主に7つの様式があり、必要な23項目を満たしていれば、事業所独自のフォーマットで作成することも可能です。
利用者の情報を一元化することによって、ケアマネジャー(以下ケアマネ)は以後のモニタリングなどの業務に活用でき、業務も効率化します

では、アセスメントシートはどのような点に注意してカスタマイズすればよいのでしょうか。
この記事では、業務効率化につながる改良点を紹介します。

アセスメントとは?アセスメントと重要性について

介護サービスを受けようとするとき、利用者はケアマネにケアプランを作成してもらいます。
ケアマネはケアプランを作成するにあたり、利用者や家族からヒアリングして必要な情報を収集します。
その面談をアセスメントといい、アセスメントで得た情報をまとめたものをアセスメントシートといいます。

アセスメントの重要性

介護サービスでは、ケアプランを柱にさまざまなサービスを展開していきます。そのため、ケアプラン作成時に行うアセスメントが、よりよい介護サービスを提供するためのカギとなるのです。アセスメントでは、利用者、家族から現在の状況や要望などを注意深く聞きとります。

万が一、利用者がケアプランに納得できない場合には、ほかの事業所に行かれてしまう可能性もあります。利用者の要望に応えるケアプランを作成することは、事業所にとっても重要です。

アセスメントシートの様式について

多くの事業所で使用されているアセスメントシートは、主に以下の7つです。

  • 包括的自立支援プログラム
    全国老人福祉施設協議会・全国老人保健施設協会・介護力強化病院連絡協議会の3つの団体が開発した様式。

  • 居宅サービス計画ガイドライン
    全国社会福祉協議会が開発したアセスメント方式で、エンパワメント支援の考えが盛り込まれている。

  • MDS-HC方式
    アメリカやヨーロッパ、日本などの国際的な研究者団体InterRA(インターライ)により開発されており、在宅・施設のどちらの場合でも使用可能。在宅と施設を行き来する高齢者の情報を収集し、分析するのに最適。

  • R4
    全国老人保健施設協会が介護老人保健施設でのケアのために開発した様式。5段階の絶対値評価。

  • ケアマネジメント実践記録方式
    日本社会福祉士会が開発した方式。調査分析の内容が広範囲であり、細部まで対応している。

  • 日本介護福祉会方式
    使用できる対象が広い点が特徴で、成人から高齢者までの幅広い年齢層に用いることができる。

厚生労働省の「介護保険制度におけるサービスの質の 評価に関する調査研究事業」によると、包括的自立支援プログラム方式の利用が多い施設は、介護老人保健施設(29.2%)と介護老人福祉施設(49.3%)です。居宅介護支援事業所では、37.6%の施設が居宅サービス計画ガイドライン方式を使用しています。

基本情報に関する9項目と課題分析に関する14項目は必須記載

アセスメントシートは、どの様式を選んだとしても、基本情報9項目と課題分析に関する14項目、あわせて23項目は必ず記載しなければいけないこととなっています。

【基本情報に関する9項目】
1
基本情報
2
生活状況
3
利用者の介護保険などの被保険者情報
4
現在利用している介護サービス等の状況
5
障害高齢者の日常生活自立度(ランクJ~C)
6
認知症高齢者日常生活自立度(自立ランクI~M)
7
主訴
8
認定情報
9
課題分析(アセスメント)理由
【課題分析に関する14項目】
10
健康状態
11
ADL(日常生活動作)に関する項目
12
IADL(手段的日常生活動作)に関する項目
13
認知
14
コミュニケーション能力
15
社会との関わりに関する項目
16
排尿・排便
17
褥瘡・皮膚の問題
18
口腔衛生
19
食事摂取
20
問題行動
21
介護力
22
居住環境
23
特別な状況

アセスメントシートは、上記の23項目を満たしていれば独自のシートで作成することが認められています。
では独自のシートを作成する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

情報は広く深くシートに記載するのがおすすめ

定型のアセスメントシートは、プラスアルファの情報を記入する欄が十分ではありません。しかし、利用者や家族の話や自身の意見をアセスメントシートにしっかりと残しておきたいと思っているケアマネは少なくないでしょう。
既成のシートを利用すると必要項目を聞きもらすことはありませんが、利用者にとって大切なのはそこから派生することがらであることは多々あるからです。

それでは、現場のケアマネは、アセスメントでどんな点を深堀りするのでしょうか。以下に、その例を見てみましょう。

これまでの生活歴

「生活状況」の欄は、あくまで現在のことです。しかし、アセスメントでは以前の仕事や、これまでの生活スタイルにまで話がおよぶことはよくあります。

例えば、利用者が元板前だったという情報を聞けば、ケアマネは「どんなお料理がお客さんに人気でしたか?」など、当時のことをあれこれ聞くでしょう。「腕がよく、常連客が毎日来ては彼の料理を楽しんだ」などの情報は貴重です。

得た情報を施設のスタッフと共有すれば、食事の時間に「サンマのおいしい調理法って焼く以外に何かありますか?」といったコミュニケーションをとるきっかけになるでしょう。
介護施設のスタッフは、利用者と積極的にコミュニケーションを図りたいと思っていても、何を話せばよいのかわからず、天気や社会ニュースぐらいしか話題がないこともあるのです。

しかし、ケアマネから情報を聞くことで利用者の過去の経歴などがわかれば、そこから話を広げることができ、スタッフと利用者の距離が縮まるきっかけとなります。

趣味や習慣

アセスメントで趣味や習慣から会話が盛り上がることもよくあります。こうした内容も無駄ではありません。

例えば、利用者の趣味がカラオケだと聞いたら「どんなジャンルがお好きなのですか?」「誰の歌をよく歌うのですか?」などとケアマネは深堀りするでしょう。それは、レクリエーションにカラオケのあるデイサービスをすすめることを考えるからです。

施設のスタッフには「この利用者は演歌歌手の〇〇の歌が得意です。レクリエーションですすめてみてください」とアドバイスすることができ、利用者がより快適に過ごしてもらうことへつなげるのです。

利用者・家族が目指している生活

利用者や家族が目指している生活は、介護を行ううえでの目標となります。

「旅行に行きたい」という利用者には、リハビリ環境が充実しているデイサービスをすすめることを検討できるでしょう。
どこに行きたいのかなど具体的に聞き、「家族と以前に行った福井の旅館に泊まり、越前ガニを食べたい」という情報を得た場合には、これもアセスメントシートに記載しておくと便利です。

こうした情報が記録に残されていると、月に一度のモニタリングで「旅行には行けそうですか? 調子はどうですか?」と話を切り出すことができます。また、利用者も「先月より筋肉がついたような感じがします。今年の冬は旅行にいけるかな?」などと、前月と今月を比較する目安にもなるので、現状を把握しやすくなるのです。
さらに、利用者も「旅行に行きたいという個人的な話を覚えていてくれた」と、ケアマネへの信頼が深まるでしょう。

現在、過去に利用していた介護保険サービス

現在利用中の介護保険サービスだけでなく、過去にどのようなサービスを受けていたのかについても書いておくと、介護プランを立てやすくなります。

例えば「以前、ここのデイサービスを退所したのは、家から遠く車酔いしてしまうことが原因」と記載しておけば、より適切な施設を探しやすくなります。

医師の意見書 かかりつけ医の電話番号、住所、医師名、診療科目

多くの利用者を抱えているケアマネにとって、すべての利用者のかかりつけ病院、診療科目、担当医師、電話番号を記憶しておくことはできません。これらをアセスメントシートに記載できれば便利だと思うケアマネは多いでしょう。アセスメントシートにはかかっている病院などを記載する欄はありますが、それよりもさらに詳しい情報を書くことができれば、利用者が万が一、施設で倒れた場合もすぐに対応ができるからです。

連絡先としてあらかじめ聞いておくのは、配偶者や子などの近親者くらいでしょう。しかし、わかる範囲で、親族や近所の人などの連絡先もアセスメントシートに記載しておけば、緊急時に家族と連絡がとれない場合でも、さまざまな方向からアプローチできます。
また、医師の意見書は保存してあるものですが、ちょっと確認したいことはよくあります。アセスメントシートに要約を転記しておけばすぐに確認できるので、ケアマネの業務効率化にもつながります。

アセスメントシートに情報を一元化するメリット

もちろんケアマネは、アセスメントシートのほかに別のシートにも詳細な情報を残しているでしょう。しかし多忙なケアマネが、月に一度のモニタリングのたびに、あっちこっちから情報をひっぱりだして確認しなければいけないようでは大変な手間がかかります。

したがって、独自のフォーマットの作成を検討している管理者は、ケアマネがどのようなことを記録したいのかという要望を聞き、アセスメントシートに情報を一元化できるようにするとよいでしょう。ケアマネの負担が軽減されると同時に、より良いサービスの提供につながります。

アセスメントシートに情報を一元化することにより、迅速な対応が可能になります。利用者に何かあった場合にも、アセスメントシートを見れば必要な情報を得られるからです。利用者の安心と、事業所の良い評判にもつながるでしょう。

情報が整理されたアセスメントシートを作成するには

アセスメントシートをより良く活用できる形式にカスタマイズするには、多大な労力が必要です。そこでおすすめなのが、介護ソフトの導入です。現在はデジタル機器に慣れていない人でも簡単に操作できる製品も多く、誰でも自由にアセスメントシートを作成することが可能です。

作成したシートは、検索も容易であり、探している情報をすぐに閲覧できることも大きなメリットです。

利用者一人ひとりに合ったアセスメントシートの作成でサービスの質はグッと上がる

事業所にとって、ケアマネがストレスなく働きやすい環境を整えることは、利用者へのサービスの質の向上のためにも重要です。事業所の評判にもつながり、多くの人に「この事業所で介護サービスを受けたい」と思ってもらうことも可能でしょう。

介護ソフトのなかでも「介舟ファミリー」は、直感的に使える操作性の良さが特徴で、初めてソフトに触る人でもスムーズにアセスメントシートの作成が可能です。もちろん、ケアマネの業務効率化を図ることができ、利用者への万全なフォローも不可能ではなくなるでしょう。ぜひ「介舟ファミリー」の導入をご検討ください。